2012年6月19日火曜日

BIプロジェクトの80%はセルフサービスであるべき

従来のBIツールは、情報システム部門に頼らずにビジネスユーザーが自ら使いこなすことが難しく、BIに期待していた効果を得ることが難しいという課題があります。その課題を解決するためにユーザーエクスペリエンス、コンシューマライゼーション(本ブログの「BIのコンシューマライゼーション」をご参照ください)、セルフサービスなどのトピックが注目を集めています。もちろんDomoの製品理念においてもこれらのトピックは非常に重要な要素です。

フォレスター・リサーチのアナリストBoris Evelson氏がセルフサービスBIについての記事を書いているので、その内容をピックアップしてBIにおけるセルフサービスの必要性と要件についてまとめました。
そもそもなぜBIにおいてセルフサービスが必要なのか。ほとんどの企業ではBIの主管部門が情報システム部門であることに起因しています。従来型のBIツールは情報セキュリティー、プロジェクト管理、業務プロセス分析などの情報システム部門が得意とするスキルを必要としているため、自然にBIは情報システム部門が担当することになったのでしょう。その一方、情報システム部門がすべてのBIプロジェクトの中心になってしまっているためにビジネス部門の要求にタイムリーに応えることができずにボトルネックになってしまっているケースがほとんどです。その要因は3つあるとEvelson氏は分析しています。

  1. BI要件は情報システム部門が対応できるスピードより速く変化する
    ERPやCRM、人事管理などのようなエンタープライズアプリケーションは、導入後数年間に渡って大きな変更を加えること無く使えるものが多いでしょう。一方BIにおいては、企業統合、競争環境の変化、組織改革などの突発的な変化によって要件が一夜にしてガラリと変わってしまう場合があります。
  2. 従来のウォーターフォル型のソフトウェア開発手法はBIに向かない
    システムの要件をしっかり定義して、仕様を固めて、開発者に実装を委ねるという従来型のウォーターフォール型の開発手法は、頻繁に要件が変化するBIに不向きな開発手法だといえます。BIでは、なるたけ早い段階でビジネスユーザーに使えるものを提供して、それを使っていくなかで出てくる要件を満たしていく方が望ましいでしょう。
  3. BIの要件の優先順位はビジネス部門と情報システム部門で異なる
    ビジネス部門にとっては、当然ながらビジネス要件が最も重要な要件です。さらに、それらの要件はビジネス部門のタイミングで提供されなければなりません。一方情報システム部門としては既存のインフラやアプリケーションとの親和性やスムースな運用管理などが重要な要件になります。当然ビジネス部門と情報システム部門はこのような隔たりを克服しながらプロジェクトを進めていくのでしょうが、要件やタイミングにおける妥協が最終的にビジネス部門の不満になってしまうケースが多いでしょう。
Evelson氏、及びフォレスター・リサーチは、決してすべてのBIプロジェクトから情報システム部門をはずすことを提案しているのではないといっています。当然ながら複雑でミッションクリティカルなBIアプリケーション、特に外部に公開されているものやリスクの大きいものについては情報システム部門がしっかりと管理をする必要があります。ただし、このような制約を受けるべきBIプロジェクトは企業のすべてのBIプロジェクトの20%にとどまるべきであり、残りの80%のプロジェクトはビジネス部門が主体となって実行されるべきだとフォレスターは言っています。

そこで重要になってくるのが「セルフサービス」ということです。フォレスターが実施したリサーチ「Self-Service BI Platforms, Q2 2012」では、複数のBIツールにおけるセルフサービス機能を評価しています。フォレスターが挙げているセルフサービスの要件や機能には以下のようなものが含まれています:
  • 生データの自動モデリング
  • 計算指標を臨機応変に作成できる
  • ビジネスユーザーと情報システム部門のコラボレーション
  • データの仮想化と制限の無いドリルダウン(深堀り)
  • サーチのようなGUI
  • アプリケーションをサンドボックスで作成
  • モデル化されていない生データの探究的分析
  • セルフサービス環境から運用環境へのマイグレーション
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この投稿のタイトルにもしましたが、「80%のBIプロジェクトがセルフサービスであるべき」という考え方には非常に共感しました。情報システム部門から提供されるBI以外にエクセルや自前のツールに頼って業務を回しているビジネスユーザーが非常に多いと思いますが、おそらく情報システム部門としては見て見ぬふりをしてその行動を支援することはしていないでしょう。情報システム部門、さらには経営層がこのような「支援されないセルフサービスBI」の実態に真正面から取り組み、効果的なセルフサービスBIツールを正規にビジネスユーザーに提供してサポートすることでビジネス部門においても、情報システム部門においても負荷を減らし、企業全体としてより効果的なBI環境が構築できるのではないでしょうか。

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