2012年7月19日木曜日

良いデータは必ずしも良い意思決定につながらない

少し前になりますが、2012年4月のHarvard Business ReviewGood Data Won't Guarantee Good Decisionsという記事が掲載されました。この記事は、Corporate Executive Board(以下「CEB」)が22社のグローバルカンパニーの社員5000名を対象に行った調査結果に基づいて企業におけるデータを活用した意思決定の実態やその問題点、そして今後より効果的にデータを経営に活かしていくための課題について解説しています。多くのテクノロジーソリューション同様、BIもやはり人材スキル、業務プロセス、企業風土が伴わなければ無用の長物になりかねないことがよくわかります。

この調査では、まず調査対象者を3つのグループに分けました:

  1. Unquestioning Empiricist:絶対的経験(実績)主義者
    判断力よりデータに頼るタイプ
  2. Visceral Decision Maker:直感的意思決定者
    とにかく直感で判断するタイプ
  3. Informed Skeptic:情報に精通した懐疑論者
    データ分析結果と自分の判断力のバランスがうまく取れるタイプ
当たり前の結論かもしれませんが、3番のInformed Skepticが最も良い判断が行えるタイプです。高いデータ分析スキルを持ち、他人の意見も聞き入れつつ必要に応じて自ら主張ができる、優秀でいわば「大人」な人材であり、どんな企業でも最も重宝されるタイプです。

ただ残念なことに、この調査では全体のわずか38%、経営層に絞っても50%しかInformed Skepticがいないという結果が出たのです。さらに深い分析を行ったところ、Informed Skepticが多い部門は、少ない部門に比べて業務効果、業務効率、マーケットシェア増加率などの様々な指標において成績が秀でていたという結果が出たそうです。

この全般的な人的スキル不足以外に、CEBは効果的なビッグデータ投資の回収を妨げている4つの要因を特定しました:
  1. 分析スキルが極少人数の社員に集中している
    多くの企業は分析エキスパートを雇用することで組織全体にノウハウが浸透することを期待しているものの、結局エキスパートに頼りっぱなしになっている。
  2. 情報技術部門は「情報」に費やす時間を増やして「技術」に費やしている時間を減らさなければならない
    多くの情報技術部門(情報システム部門)は会計や人事のように業務要件があまり変わらない部門とともに育ってきたため、業務要件が広範囲で頻繁に変化する部門にうまく対応することが難しく、克服するためには情報技術部門のヒューマンスキルの向上が必要。
  3. 信頼性の高い情報は存在するが見つけにくい
    多くの企業が蓄積したデータに効果的にアクセスするための仕組みを持ち合わせていない。ソーシャルメディアの台頭や新たな販売チャネルの出現によってデータ量が増えたことによって問題は増幅されている。実に44%の社員は日々の業務に必要な情報がどこにあるか把握していないという。
  4. 経営者は人材、資本、及びブランドの管理にくらべて、情報の管理が不得意である
    多くの経営者は、データは情報システム部門に任せるべきものだと考えている。データ投資の回収が進まない理由は、データを理解できる組織づくりへの投資が不足しているためであることに経営者は気づかなければならない。
集めたデータをより効果的に活用するために企業がやらなければならないことは大きく2つあるとCEBは提唱しています。
  1. 従業員のデータリテラシーの向上と意思決定にデータを効率的に活かすためのトレーニングを行う。
    データの読み取り方や、データの精度や信頼性の見分け方を理解するための研修も大事ですが、定常的なコーチングも重要です。多くの場合、企業がデータ分析スペシャリストを雇用する際に定量分析スキルを重視する傾向があるようですが、むしろ対人スキルの方が重要なのです。単純に出てきた疑問に対して分析を行なって回答を返すだけではなく、対人スキルに長けたデータ分析スペシャリストであれば他の社員に対してうまくスキルトランスファーを行うことができるので、組織全体としてのデータ分析力が向上するのです。
  2. 従業員に対して正しいツールを提供する。
    調査では、半分の社員が会社から提供されるデータが実際には使えない状態で提供されていると言っています。社員へのデータ提供に優れた会社では生データではなく、高度なフィルタリング機能やビジュアライゼーションを提供しています。また、データの活用が進んでいるある企業では、多くの社員が利用する「エンタープライズツール」と限られた部門や専門家のための「スペシャリティーツール」をうまく使い分けることでビジネスユーザーと分析エキスパートそれぞれのニーズにうまく対応しています。

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