2012年9月21日金曜日

ダッシュボード設計の7つの大罪

ダッシュボードはBIの価値を最大限に引き出すための重要な要素です。ダッシュボードは既存のBI資産をはじめ企業がアクセスしうるあらゆるデータをリアルタイムで視覚化することで経営判断を支援し、コストの削減、生産性の向上、業務の最適化、そして競合に勝つことを可能にします。

ただし、多くのダッシュボードが期待に応えることができずに失敗プロジェクトに終わってしまっています。多くの場合、ダッシュボードプロジェクトが陥りがちな次の7つの間違いのいずれかに原因があるようです。
  1. 利用価値の低い指標にこだわり過ぎ
  2. 経営層の支持がない
  3. ボトムアップ方式の設計
  4. ユーザーの意見を取り入れていない設計
  5. ユーザーインターフェースの軽視
  6. 要件の詰め込みすぎ
  7. 運用フェーズでの発展が考慮されていない
それぞれの間違いについてもう少し深く考察していきましょう。

1.意味の低い指標にこだわり過ぎ

多くの企業ではダッシュボードを導入するにあたって、業績をさまざまな観点から捉えることができると考え、KPI(主要業績評価指標)の定義に非常に多くの時間と労力を費やしてしまいます。中にはすべての業務をつかさどるKPIを事細かに定義しているケースもあるようです。残念ながらダッシュボードをもってしても無数の利用価値の低い指標に囲まれた主要な課題や成功要因を瞬時に見つけられるような視覚化を実現することはできません。

KPIを定義する上で重要なことは、より多くのKPIを定義することに重きを置くのではなく、KPIの焦点と意義に重きを置くことです。数十ものKPIが並んだダッシュボードが適切な場合もありますが、KPIの焦点と意義が間違っていれば3つか4つでも多すぎることもあります。

ダッシュボードを設計するにあたって、それぞれのユーザーの役割に応じて適切なKPIを選定することが重要です。たとえば、ある企業が営業責任者、財務責任者、および人事責任者向けのダッシュボードを提供しているとしましょう。当然のことながら社長はこれらすべての分野について状況を把握する必要がありますが、それぞれの部門責任者が必要とするレベルの情報までは必要無いはずです。社長が必要とするダッシュボードは、それぞれの部門責任者が利用するダッシュボードのサマリーダッシュボードと、必要に応じてより細かな指標の閲覧するためのドリルダウン機能なのです。

KPIを定義するときに多くの企業が陥る問題として、結果指標を多用してしまうことです。結果指標とは、売上のような事業を行った結果をあらわす指標のことです。もちろん売上を把握することは非常に重要なことですが、売上を増加させようと思ったときには売上という指標そのものを見ていても意味は無く、売上に影響する指標、すなわち先行指標を見ていかなければなりません。売上の先行指標として考えられるものとしては、新規の問い合わせ数、営業部門が作成した見積書の数や総額、あるいは広告出稿量などがあります。業種や業態、個々の企業によって先行指標は異なりますが、ポイントは自社において経営判断をするために必要なKPIを定義することです。

2.経営層の支持がない

経営層からの支持が無いダッシュボードプロジェクトは簡単に迷走してしまいます。ダッシュボードはその性質からして企業内の多くのデータソース、それもセキュリティー管理の厳しいデータソースから情報を取ってくる必要があります。そのため経営層の支持が無ければ、プロジェクトチームはデータにアクセスするための許可を得るために多大な努力を費やすことになってしまいます。

ダッシュボードプロジェクトを経営層が支持しない理由はいくつか考えられます。ダッシュボードそのものの意義を感じていないケースもあれば、過去に失敗したダッシュボードプロジェクトの経験が原因かもしれません。

ダッシュボードプロジェクトに対する経営層の支持を得るためにはダッシュボードの意義をしっかりと理解してもらう必要があります。最初から経営層全体からこのような支持を得ることは簡単ではないので、まずは一部門とその部門長に焦点を合わせて品質の高いダッシュボードを構築すると良いでしょう。最初のダッシュボードの成功をもとに、その部門内の管理職により詳細なダッシュボードを展開したり、他部門に対してダッシュボードの有用性をアピールしたりすることもできます。

3.ボトムアップ方式の設計

本来ダッシュボードの設計は経営上、あるいは業務上のニーズに基づいて行われるべきものです。ただ、既に存在しているデータ、あるいは容易に入手できるデータに基づいてダッシュボードを設計してしまうとプロジェクトは失敗します。

トップダウン方式の設計を行うことで、ダッシュボードに含まれるKPIが経営判断や事業運営において必要なものであることを担保することができます。そのためには容易にアクセスが許可されないデータや、収集されていないデータが必要になる場合がありますので、そのためにも経営層の支持があることが大事なのです。

4.ユーザーの意見を取り入れていない設計

ダッシュボード導入のプロジェクトチームがダッシュボードのルック&フィールや情報構造、視覚化の方法やドリルダウンのパスをあらかじめ決めてしまっているケースがあります。このまま設計が進んでしまうと、ユーザーのワークスタイルや実際の業務に沿わないダッシュボードになってしまいます。

たとえば、営業責任者が自分の部門の状況考えるときに、まず顧客の「業種」、次に顧客企業の「地域」、そして最後に「規模」という順番で整理しているとしましょう。それに対してダッシュボードプロジェクトチームが設計したドリルダウンの順番が「地域」「規模」「業種」だったとしたら、果たしてそのダッシュボードはどれくらい利用されるでしょうか。



ユーザーの意見を取り入れるために外部コンサルタントを利用することも有効な手段です。外部コンサルタントを利用することで、部門間に存在する先入観や利害関係を排除し、より公正なヒアリングを行うことができます。

5.ユーザーインターフェースの軽視

ダッシュボードのユーザーインターフェースが使いにくければ、ダッシュボードの利用率は上がりません。ダッシュボードは単純に見栄えの良いグラフを並べたものではなく視覚的なアプリケーションなので、直感的に操作できることや、操作方法が統一されていることが重要です。ダッシュボードのある箇所をクリックしたときの反応が、他のダッシュボードの同一箇所をクリックしたときと同じ反応でなければなりません。

ユーザーインターフェースが正しく作られていれば、ダッシュボード内で提供される情報の理解度と信頼度が上がります。逆に悪いユーザーインターフェースは混乱と懐疑心を招いてしまい、最終的にユーザーによって利用されなくなり、プロジェクトが失敗に終わってしまいます。

6.要件の詰め込みすぎ

ダッシュボードプロジェクトを成功させるためには、フェーズ分けされた導入アプローチを取ることが重要です。一度にたくさんの要件を詰め込みすぎるとプロジェクトの遅延が発生したり、完成することなく場合もあります。仮に遅延しながらもダッシュボードが完成したとしても、日々進化するユーザーの要件に追従することができずに利用価値の低いものになってしまうケースが多いようです。フェーズ分けされたアプローチを取ることで、早いタイミングでユーザーに対してダッシュボードを提供することができ、その後のユーザー要件の変化に対応することが可能になります。

プロジェクトをフェーズ分けする方法はいくつか考えられますが、ポイントは理論的に正しい単位に分けていくことです。たとえば、部門別、役割別、役職別などが考えられます。導入していく順番に決まりがあるわけではありませんが、プロジェクトを支持してくれている部門長のダッシュボードからはじめて、次にその部門全体向けのダッシュボードや類似した部門のダッシュボードという具合に近いところから広げていくことをおすすめします。

各フェーズの導入期間の目安は6週間くらいが妥当でしょう。それぞれのフェーズが6週間以内に完了する見込みが立たないようであれば、フェーズをさらに小さい単位に細分化して6週間以内に収まるように調整し、小刻みにダッシュボードを展開していくべきです。

7.運用フェーズでの発展が考慮されていない

良いダッシュボードは必ず発展するものです。ユーザーが増えるにつれて要件が増えたり、当初予定していなかったダッシュボードが必要になったりします。当初導入したダッシュボードの構造がこのような追加要件と発展に対応できるものでなければ、ダッシュボードプロジェクトは最終的に失敗してしまいます。多くのプロジェクトは「成功」といえるレベルまで成長したところでユーザー数の限界や当初導入したハードウェアの処理能力能力の限界に達してしまいます。こうなると当初はサクサク動いていたダッシュボードがもたついてしまい、画面上の砂時計を見飽きてしまったユーザーはダッシュボードを使わなくなってしまいます。

この状況を回避するためには当初から拡張性のある構造を作っておかなければなりません。残念ながら多くのダッシュボード製品は50から100ユーザー程度で限界を迎えてしまいますので、製品選定時には注意が必要です。ダッシュボード製品を選ぶときは、その製品が当初計画しているユーザー数に加えて当面のユーザーの増加をカバーできるものを選ぶようにしましょう。また、ユーザーが増えた際にスムーズに拡張できるサーバー型の製品を選ぶことをおすすめします。

ユーザー数を検討する際には、ダッシュボードが経営層や管理職のみが使うものと考えないように気をつけてください。なんらかの指標で成功度合いを測ることのできる職種やデータに基づいた判断をするべき職種はすべてダッシュボードユーザーの候補であるということを認識する必要があります。

ダッシュボードの落とし穴を避けるために

ダッシュボードは企業が所有しているデータや既存のBI資産から価値を引き出すための必要不可欠な要素です。ドーモはダッシュボードプロジェクトを成功に導くためのノウハウ、ソフトウェア、サービス、そしてビジョンを持っています。ドーモは拡張性が高いので、ユーザーや要件の増加に対応することができます。また、企業ごと、ユーザーごとにカスタマイズするための柔軟性も備えているため、経営層から一般社員に至るまでのすべてのユーザーに対して価値を提供することができます。

また、ドーモのアプローチは企業内に散らばったデータをうまく活用できるので投資額を抑え、設計と実装にかかる時間を短縮し、投資対効果(ROI)を向上することができます。組織全体のデータをリアルタイムにフェデレーション(federation、連合化)することによって、膨大な時間と費用がかかるデータクレンジングやデータ統合を行うことなく、投資額を抑えながらも短期間で価値を提供します。

この記事でご紹介した考え方やソリューションについてより詳しく知りたい方は、Domoが提供する資料 The 7 Deadly Sins of Dashboard Design (英文)をご覧ください。

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